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47.毎年、コツコツ、少しずつ

 今年、東京の桜は314日に開花しました。これは観測史上、最も早い記録だそうです。ところが、329日、関東では季節外れの大雪となり、東京でも1㎝の雪が積もりました。季節がいつもより慌ただしく進んでいくなか、突然の雪に満開を迎えた早春の花も驚いたことでしょう。

 早春の花は、「春の儚いもの(=スプリング・エフェメラル)」と呼ばれます。その代表としてカタクリを挙げることに、疑問を呈する方はいらっしゃらないでしょう。東京近郊にも、有名なカタクリ群生地があります。斜面や丘をピンク色に染めて咲く様は、もちろん、圧巻です。しかし、ポツンと一つ咲くカタクリが風に揺れる様は、置いてきぼりをくったように少し寂しげで、「春の儚いもの」を感じさせてくれます。

 カタクリは大きな二枚の葉を広げ、その間から茎をのばし、その先に大きな花を一つ咲かせます。その花を観察していると、地面からポツリと顔を出しているカタクリの小さな一枚の葉っぱを目にすることがあります。その度に、「これから咲くのかな」、と怪訝な思いがします。なぜって、花の盛りは過ぎているのに、こんなに小さな葉っぱで、今から花をつけられるのかな、と心配になるのです。


花の左に、小さな一枚の葉が顔を出しています



 カタクリの小さな一枚の葉っぱを見つけるたびに疑問が浮かんでくるのですが、街に帰るとケロリと忘れてしまいます。しかし、先日、そういえば、とネットで調べてみました。カタクリの生活史、と入力し、検索ボタンを押すと…、カタクリは芽を出してから、10年もかかって花が咲く、との記述が出てきました。何と、10年です。興味がわいて、他のサイトも調べてみました。

 2年目の春、小さな葉っぱを一枚地上に出し、2ヶ月ほど光合成をして地下に養分を蓄えます。やがて葉は枯れ、翌年、春を迎えると、前の年より少しだけ大きい葉を一枚出し、光合成をして養分を蓄え、数ヶ月で枯れます。地上に顔を出す一枚の葉は年ごとに大きくなり、その分だけ、蓄える養分も多くなります。そして、10年目を迎えると、地下に蓄えた養分を使って葉を二枚出し、茎をのばして、あのピンク色の花をつけるのです。しかも、その後も毎年のように花をつけ、平均寿命は4050年と推定されているそうです。

 いかがでしょうか、カタクリは「春の儚いもの」と呼ばれていますが、その一生は、何と、たくましいことでしょう。花のイメージとはずいぶん違います。人は見かけによらない、と言いますが、この格言は花にも当てはまりますね。

 暖かい晴れた日、カタクリは花びらを大きく反り返し、「さあ、蜜を吸いに来て」、と飛び交う虫を誘います。花びらのつけ根にある模様(=蜜標)は、虫に蜜のある場所を教えるためのものだそうです。カタクリの一生を知り、私は、ますます、この花が好きになりました。


個性的なカタクリの蜜標



 職場を見まわすと、毎年、コツコツと、地道に努力を重ねる人がいます。しかし、努力の成果が、少しあがったとしても、表に出すことはありません。むしろ、わからないように隠してしまいます。そして、時が満ちるのを待って、一気に努力の成果を発揮し、皆が驚く『見事な花』を咲かせるのです。カタクリの開花に似て、こういう仕事をする人って、『カッコイイ』、と思います。 


カタクリの写真を、おまけに、もう一枚

 

(社長)