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42.採点者泣かせ

 秋の野山を代表する花といえば、キク(菊)でしょう。一口にキクの花といっても、ノコンギク、ユウガギク、シラヤマギク、リュウノウギクなどありますが、どれも白い花で形も似ています。見分けるには、花を見るのではなく、葉の形や、葉の表面のザラツキの有無などを確かめます。キクの花のように、あちらこちらに咲いているわけではないので、見つけると少し嬉しくなるのがホトトギスの花です。
 東京近郊の野山で見つかるのは、ヤマホトトギス、ヤマジノホトトギス、タマガワホトトギス、でしょうか。タマガワホトトギスは、花の色によって明確に他の二つと区別がつきます。ヤマホトトギスとヤマジノホトトギスを区別するには、花被片に注目します。花被片は、「かひへん」と呼び、花びらとガクの総称です。花びらとガクが同じ形であったり、とてもよく似ていたりして、区別しづらい時に花被片とまとめて呼ぶそうです。図鑑の説明には、この花被片が、ヤマホトトギスは反り返るが、ヤマジノホトトギスは反り返らない、とあります。他にもいくつか見分け方があるようですが、花被片の形状に着目する方法が一番分かりやすいと思います。
私が東京近郊の野山で撮った写真を見てください。花被片の反り返り具合に着目すると、1枚目の写真はヤマホトトギス、2枚目はヤマジノホトトギスだと思います。
花被片が大きく反り返る「ヤマホトトギス」


花被片が反り返らない「ヤマジノホトトギス」


  しかし、自然界は単純ではなく、次のような花を見かけることも珍しくありません。


 いかがでしょうか、6枚の花被片のうち、2枚は下向きに反り返っています(3枚のようにも見えますね)。これは、ヤマホトトギスの特徴です。しかし、1枚は反り返っていません。これは、ヤマジノホトトギスの特徴です。それから、花被片の2枚は、なんと上向きに反り返っています。私の見立てでは、ヤマホトトギスだと思います。しかし、そんな感じがする、という頼りない理由にすぎません。
 ヒトは花の特徴を丹念に調べて、花の見分け方を記載しました。しかし、ヒトが記載したことを忠実に守って、花が咲いているわけではありません。そのため、ヒトの記載内容と合わない花が出現するとしても、何も不思議なことではありません。
 これと似たようなことが、記述式のテストの採点で起きることがあります。例を挙げてみましょう。ある記述式の問題について、3つの内容(A、B、Cの3つの内容としましょう)が書かれている解答を正解と決めて、採点基準を作ります。しかし、採点を始めてみると、想定外の解答に出くわします。たとえば、AとBは書かれているのにCは書かれておらず、代わりにDについて書かれている。しかし、よく読んでみると、これも正解といえるのではないか。こんなことが良くあるのです。生徒は、事前に決められた採点基準に沿って解答を書くわけではないので、当たり前です。そして、AとBとC、または、AとBとDが書かれている解答を正解とする、と採点基準を修正し、一から採点のやり直しです。時には、採点基準の修正が一度ではすまないこともあり、そのたびに一枚目の答案から採点をやり直しです。
 数百枚の答案であれば、容易ではありませんが、記述式テストの採点は可能です。しかし、数万枚、数十万枚の答案となると、考えただけでも目まいがしそうです。来年の1月、センター試験に代わる国語のテストで記述式の問題が出題されます。採点を担当なさる方々は、目まいなんかしてる暇はないでしょう。何といっても、人生を左右する重要なテストなんですから。一枚、一枚の答案をしっかりと読んで、公正に採点されることを期待します。

(おまけの写真)
 次の写真は、タマガワホトトギスです。色が違うので、一目瞭然ですね。

 タマガワホトトギス

(社長)