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38.どんな花にも花盛り

 6月、梅雨の中休みをねらって、高山植物を見に八ヶ岳に行くようにしています。しかし、今年は、週末の天気が良くなかったり、キャンセルできない用事が入ったりと、延ばし延ばしにしているうちに、とうとう6月の最終週になってしまいました。残念ながら、今週末も行けそうにありません。しかし、無理して行っても、がっかりして帰ることが多いので、ここは、あきらめるしかありません。天気相手にケンカしても、絶対に勝ち目はありませんからね。
 昨年は、6月中旬に出かけました。私は、公共交通を利用しますので、中央線の茅野駅でバスに乗換え、美濃戸口で下車し、埃っぽい砂利道を美濃戸山荘まで歩きます。ここで登山道は北のルートと南のルートに分かれます。北ルートの方が少し楽できますが、花が多い南ルートを選びます。ここからテント場のある行者小屋までは2時間弱の歩きです。
 焦らず歩くことが肝心ですが、見上げると、水気をタップリ含んだ黒っぽい雲が空を覆っています。大量の水を抱えるのは重くてかなわん、と、ここで下界に向けて一気に水を放り出されてはかないません。自然と足が速まりますが、登山道の脇に点々と続く小さな白い「もの」に目が留まります。足を止め、その場にしゃがみます。白い小さな実がなっているように見えますが、この「もの」の正体はズダヤクシュの花です。

 ズダヤクシュ

 

 ズダヤクシュは喘息薬種と書くそうです。ズダは信州の方言で喘息のこと。薬種は薬の材料のことだそうです。喘息の薬の材料なので、ズダヤクシュ。面白いですね。しかし、なぜ、この植物を使って喘息の薬を作ったのでしょうか。この植物が喘息に効くことを偶然見つけたからでしょうか。あるいは、意図的に探した結果この植物が喘息に効くことを見つけたからでしょうか。それとも、何らかの理由でこの植物を使って偽薬を作ったからでしょうか。思いつくままに考えをめぐらせると、意外に早く時間が過ぎていきます。一つのお題をめぐって、長い時間、あれこれと考えをめぐらせることができると、山を下りて1時間以上もバスや列車を待たなくてはならない時に便利です。
 ズダヤクシュの花は小さく目立たちませんが、焦点をこの花に合わせれば、あちらにも、こちらにも、たくさんの花が咲いていることに気づきます。まさに、ズダヤクシュの花盛りです。春のサクラ、初夏のツツジ、そして、梅雨のアジサイに限らず、どんな花にも花盛りがあります。ズダヤクシュの花盛りは6月。林の中の登山道の脇で、雨にうたれながら、ひっそりと咲くのです。花をヒトに置き換えれば、どんなヒトにも、そのヒトにとっての花盛りがある、といえますね。
 今回は、地味な花の話になってしまいましたので、最後に派手な花を二つ取り上げます。一つはアズキナシ。梅雨の晴れ間、この花に日がさすと、周囲がパアッと明るくなります。

 アズキナシ

 

 もう一つは、ウマノアシガタ。この花の別名は、キンポウゲ(金鳳花)。この花も、雲の切れ目からさす日を浴びると、金色に輝くようです。

 ウマノアシガタ

(社長)