HOME  >  日々雑感一覧  >  社長の日々雑感  >  34.ヤマボウシに当てはまること

34.ヤマボウシに当てはまること

 家庭の事情で、突然、日光に一泊することになりました。東武日光駅に着くと、湯元行きのバスに乗り換えます。すると、驚いたことに、ほぼ満席の乗客は外国からの観光客ばかりで、車内に英語やフランス語などが飛び交います。バスの運転手さんが、2回、とても気のきいた冗談を言いました。私は、クスリ、としましたが、外国の方たちには、当然、意味が分かりません。残念なことです。
 赤沼で降り、戦場ヶ原を歩きます。4月に入ってからドッカリ雪が降ったそうで、一面、真っ白な戦場ヶ原の奥に、谷筋にも雪がタップリ残る山が連なります。湯ノ滝、湯ノ湖を経て、この日は湯元温泉に泊まります。軒先から下がる大きなツララを見ながら露天風呂につかるのは、良いものです。

 

 
戦場ヶ原の奥に連なる山々

 

 二日目、日光東照宮を見物しました。しかし、歴史的建造物に興味のない私は、世界遺産の建物よりも、細い水路に咲くハナネコノメに大喜びです。東照宮から神橋に下り、日光駅へ向かうメインストリートを歩きます。すると、小さなお寺の境内や小さな公園の片隅に、ピンク色の花をつけた小さな木。もしや、と近づくと、果たして、アカヤシオではありませんか。アカヤシオは深山に咲く、と思っていた私には、まさに衝撃の事実です。
 


街中で咲くアカヤシオ

 

 日光駅で土産を買うと、観光地の日光ではなく、一般の人たちが暮らす日光を歩いてみようと思い、足の向くまま行動開始。すると、駐車場の一角に、道路の脇に、そして、あちらの民家、こちらの民家の庭先に、アカヤシオが満開の花をつけています。気に入った花にカメラを向けていると、「何か珍しいものでもありましたか?」振り返ると、地元のお婆さんが、少し不思議そうに私を見ています。「これは、アカヤシオですね。驚きました。私は東京から来た者ですが、東京近くの山では、千メートルから千五百メートルくらい登らないと、この花は見れないんですよ。」これに対して、お婆さんはニコニコと笑うだけ。そして、自分の息子も東京にいるが、山が好きで、よく日光に帰ってくる、とのこと。最後に、きれいな写真が撮れるといいね、と見送ってくれました。
 今回、アカヤシオだけでなく、同じく、山に咲くものと思っていたフデリンドウも街を流れる川の土手に咲いていました。アカヤシオやフデリンドウは山に咲くという私の常識は、いとも簡単に崩れてしまいました。しかし、気を取り直して考えてみると、ヤマボウシのことが頭に浮かびました。ヤマボウシは山に自生し花を咲かせます。しかし、街中の民家の庭先や小さな街の公園でも咲き、街で暮らす人たちにとって、白い花をつけたヤマボウシは当たり前のことです。ヤマボウシは山でも街でも咲く。それと同じように、アカヤシオやフデリンドウも山でも街でも花が咲く。ヤマボウシに当てはまることが、アカヤシオやフデリンドウに当てはまっているだけ。こう考えると、なにも驚くことではありませんでした。お騒がせしました。

 

街を流れる川の土手に、フデリンドウの花

 

(社長)