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33.慣れ親しむ

 先日、スミレの写真を撮りに、近くの野山を歩いたときのことです。しゃがみ込んで、カメラを花に向けていると、「スミマセン」、と声をかけられました。気づかないうちに登山道をふさいでいたのだろうと思い、立ち上がって道をあけました。すると、「その花は何ですか?」花の名前を知りたかったのか、と思い直し、「おそらく、ヒナスミレでしょうね。」「へーッ、かわいらしい名前ですね。」これを機に、春の野山に咲く花の話が始まり、最後に、「有難うございます。でも、こうやって教えていただいても、うまく覚えられなくて…。それに、別の時に、同じような花を見ても、良くわからないんです…」
 確かに、花を見てその名前を判断する(=同定する)ことは、決して容易ではありません。例えば、次の3枚の写真は、おそらく、ヒナスミレ、エイザンスミレ、アカネスミレです。スミレの花は区別が難しいといいますが、大きくしてみると、違いは一目瞭然。しかし、同じ種類の花であっても、別の写真を見せられると、意外と、名前を言い当てられないものです。

 


ヒナスミレ

 

 
エイザンスミレ

 

 
アカネスミレ

 

 花の同定を厳密にやろうとすると専門的な知識が必要です。そのため、あくまでも素人判断だということを忘れてはいけません。花の特徴が良くわかる写真を使って丁寧に説明している図鑑もありますが、いざ、目の前の花とつき合わせると、どうも違う、なんとなく違う、うまく言えないけど違う、と感じることが多く、結局、何の花なのか分からない、もう、あきらめた! そして、そんな事態が続くと、花を覚えるのは難しい、もう、名前なんてどうでも良い、となりがちです。せっかく花の名前に興味を持ったのに、残念なことです。
 私は山歩きを始めた頃から花に興味がありますが、今もって名前の判断には慎重さが必要だと思います。名前を覚えた花であっても、姿かたちや色合いが微妙に違うと、同じ花なのか別なのか迷うことがあります。しかし、当然ですが、犬は一匹として同じ容姿のものはいませんが、犬かどうか迷うことはありません。では、なぜ、花の場合は迷うのでしょうか。おそらく、それまでに見た回数(=慣れ親しみ度合)の違いではないでしょうか。 
 この世に生まれて以来、犬を目にした回数は相当な数になることでしょう。一方、これに比べれば、野山に咲く花を見た回数は高が知れてます。そのため、同じ種類の花の中の単なる個体差なのか、それとも、そもそも種類が違うのか判断が難しいのです。少しくらいの個体差に迷わされることなく、ある花の名前をほぼ正確に判断できるようになるためには、毎年、何度も見飽きる位にその花を見て、その花の特徴が一見して分かるくらいに「慣れ親しむこと」だと思います。4月、新入社員に、「仕事は習うより慣れろ」、と話すことがありますが、同じことだ、と言えますね。

(社長)