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24.カプセル

 街中では、ハナミズキが、一足早く鮮やかな紅葉を見せています。色づいた葉の陰で赤い「実」が顔をのぞかせていますが、紅葉と似た色のせいか、決して目立つとはいえません。子孫を広げるためには、鳥に「実」を見つけてもらい、食べてもらって遠くに運んでもらう必要があります。そのため、その「実」はできるだけ目立つほうが良い。その意味で、多くの植物が、まだ葉が青々としている夏の終わりから秋の初めにかけて、派手な赤い「実」で存在をアピールしているのではないかと思います。季節が2ヶ月ほど戻ってしまいますが、今回は個性的な「実」をつける植物を取上げます

1.星
 写真はクサギの「実」です。濃いピンク色の星の真ん中に、深い紺色の「実」が印象的です。ちなみに、星はガクが残ったものだそうです。個性的な配色と形なので、とても目立ちます。また、葉の緑と濃いピンクのコントラストのおかげで、遠くからでも容易に判別できます。クサギの「実」は草木染めに使われます。一方、鳥も大好きらしく、うかうかしていると先に食べられてしまうそうです。タケノコをめぐる、イノシシとの争奪戦みたいですね。

 クサギ


2.鉄球
 時代が明治から大正にかわった年に、東京市がワシントン市にサクラを送りました。そのお返しに、ハナミズキが日本に送られたとか。ハナミズキの近縁種にヤマボウシがあります(そのせいか、ハナミズキはアメリカヤマボウシとも呼ばれます)。夏の初め、ヤマボウシは白や淡い赤紫の涼しげな花を枝一杯に咲かせます。しかし、夏の終わりになる「実」は、少々グロテスクです。この「実」を見ると、子供の頃にマンガで見た、トゲのついた鉄球を敵にぶつける武器を連想させます。個性的な見た目のせいか、手にとって口にしようとするヒトは少ないかもしれません(私も食べたことはありません…)。しかし、異様な外見とは違って、「実」はとても美味しいそうです。ヒトが食べても美味しいのだから、きっと、鳥も大好きなのでしょう(残念ながら、鳥が食べているところを見たことはありません)。

ヤマボウシ


3.カプセル
 写真は、ツリバナの「実」です。ツリバナの名前の由来は、ピンクやオレンジ色の「実」が、枝から釣り下がる花のように見えるからだそうです。写真の右側のピンクの殻が割れると、左側にあるような鮮やかなオレンジ色の種子が姿を現します(私は、殻が割れる現場は見たことはありません)。殻は5つに割れ、中の種子も5個ですが、写真では4つしかありません。おそらく、1つは食べられてしまったのでしょう。ピンクの殻は、いうなればカプセルで、中の種子が育つまで保護しているのでしょう。こうすれば、育ちきる前に種子が食べられることはなくなります。ピンクのカプセルも目立ちますので、ここにごちそうがあるよ、と鳥たちに事前予告しているのでしょう。
 
ツリバナ


 おかげさまで、弊社は会社ができて10年がたちました。もっともっと、世の中の皆様に弊社のことを知っていただきたいのですが、クサギの「実」のように派手に自己アピールをすると、対応しきれないくらいのお客様からお声掛けいただいて結果的にご迷惑をおかけするかもしれません。また、ヤマボウシの「実」のように、いくら美味しくても(=丁寧に仕事をしても)、見かけが悪ければ(=宣伝が下手だと)、お客様から敬遠されてしまうでしょう。弊社は、社員5人でスタートし、少しずつ社員を増やし、社員の力量を向上させて、お引き受けする仕事を増やしてきました。その意味で、種子が熟すのを待って、少しずつカプセルを開いていくツリバナの方法が、弊社をアピールするには適していると思います。

(社長)