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漫画家の苦労話【2024年6月「みんなのお話」最優秀賞】

 知人である大学の先輩が漫画家として活動しています。

 

 この間たまたまお会いする機会があり,漫画家の仕事がどんな感じなのか,話を伺ってきました。

 

 連載の上での苦労をいろいろ話してくださったのですが,一番大変なのは連載ペースを維持することだそうです。最近は漫画雑誌だけではなくwebサイトや漫画アプリなどで独自に連載される漫画が多くなりました。先輩の作品も某社のwebサイトで配信されています。数多くある漫画の中では,たとえ面白い漫画であってもペースが維持できなければすぐに埋もれてしまいます。

 

 しかし,漫画を制作するのには,当然ですがすごく時間がかかります。少なく見積もって1コマ仕上げるのに1時間かかると仮定して,1ページあたり6コマ,連載の1話あたり16ページとすると,作画作業だけで1話につき96時間かかる計算になります。仮に1日8時間作業をするとしたら,12日かかるわけです。これはストーリーを考える時間を度外視していますから,実際にはもっと時間がかかっていることでしょう。

 

 そのため,多くの漫画家さんはアシスタントのスタッフを雇っています。先輩もまたアシスタントを雇っていました。最近は作画作業もデジタルで行われますから,オンラインでアシスタント業務をお願いするそうです。そうすると,大変なのはアシスタントへの指示出しです。なかなか指示通りにやってくれる人を探すのが大変で,せっかくお願いしても自分で手直ししなければならず,自分でやった方が早いときがあると,先輩はぼやいていました。

 

 漫画の掲載媒体が増えたことで,腕のいい人はすぐに自分の連載を持ててしまいますから,即戦力となるようなアシスタントを探すのも大変だそうです。漫画家とアシスタントの関係は師弟関係のようなものをイメージしていましたが,実際はギリギリの現場で,アシスタントの技術を育てられる余裕をもつのは難しいのだろうと感じさせられました。

 

 誰かに仕事をお願いすることの難しさは業界を問わず同じだと思います。私にも後輩ができ,指導する立場になることも増えました。そんなとき,「この仕事はこの人になら安心して任せられる」と思って仕事をお願いすることもありますし,「少し難しいかもしれないが,きっと乗り越えてくれる」と期待を込めてお願いすることもあります。後者の場合,何かあったときフォローに回る必要がでてきて,自分の仕事も増える可能性があります。しかし,思い切って仕事を任せて乗り越えてもらわなければ将来的に仕事を任せられる人手が育ちません。目先の自分の仕事が増えるのを厭わずにお願いできるような余裕や心構えを身に着けたいものだなと感じました。

 

(HR)