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2021年「大学入学共通テスト」への当社コメント(物理基礎・物理)

令和3年度(2021年実施)試験(物理基礎・物理)について

 

【総論】

 物理基礎,物理ともに,昨年度のセンター試験と比べて,解答マーク数がやや増加した。また,題意の丁寧な読み取りや,定性的な判断を必要とする問題が増えたこともあり,60分の試験としては,やや難化した。

 実生活で観察される現象を題材として思考力を問う問題も出題された。例えば,1月17日実施分物理第3問Aは,ダイヤモンドとガラスを題材とした問題で,光の屈折に関連した基礎知識をもとに,ダイヤモンドがさまざまな色で明るく輝く理由について考察する力や図やグラフを正しく解釈する力などが問われた。

 また,特に物理基礎では,文字式の計算や数値計算といった従来通りの問題に加え,実験データ等から概算値を解答する問題や,ばらつきのあるグラフを考察する問題,電流計の測定範囲に関する問題が出題され,実験などでの実用的な手法への理解も問われた。

 センター試験では,公式や,問題の典型的な解法を正しく適用すれば正解を導ける問題が出題されていた。一方,大学入学共通テストでは,公式等を正しく適用できる力だけでなく,用語の定義や物理現象を正確に理解した上で,問題文の流れや与えられた情報をもとに自身の考察を加え,初見の問題にも対応できる思考力が必要とされる。こうした問題は受験者の能力を識別するのに役に立つ。解答に極端に時間がかかる問題にならないよう配慮しつつ,能力をきちんと測ることのできる問題が今後とも継続して出題されることを望む。

 

【特徴的な出題】

 総論で述べたことを示す具体例として2つの問題を取り上げ,所感と意見を述べる。

 まず1つめに,総論でも言及した,1月17日実施分物理第3問Aのダイヤモンドとガラスを題材とした問題である。問1,問2では,それぞれ光の分散,屈折に関する文章中の空欄に入れる適切な語句の組合せを選ばせている。特に問1では,分散がどのような現象であるのかだけではなく,それが起こる理由までしっかりと理解しておかなければ,すべての空欄を埋めることができない。用語の定義や物理現象の正確な理解を求めている設問の一例といえる。これらののち,問3の「ダイヤモンドが明るく輝く理由」の考察につづく。このような実生活における物理現象の考察は,従来のセンター試験ではあまりみられなかった内容である。図5の入射角 に対する と の変化を示したグラフは,ほとんどの受検者にとって初見のもので,受検者はグラフの意味を理解し自分なりに解釈しながら解答しなければならない。思考力を問うことのできる適切な問題であると考える。

 2つめとして,1月31日実施分物理基礎第3問を挙げる。電車の運動を題材に,速さや駆動用モーターに流れる電流を記録したデータをもとに種々の物理量を計算させるものである。実測値という設定からグラフは離散的なものとして与えられており,受検者はいずれの問いでも,このグラフを何らかの形で利用して解答しなければならない。また,問2では,グラフ中の面積を概算する工夫ができるかが問われているおり,現実的なデータやグラフを取り扱う方法を理解しているかが従来よりも問われている。

【連動問題に対する誤答の許容】

 「『大学入学共通テスト』第2回試行調査への当社コメント」において,連動する2つの設問に対し,前者を間違えても後者の解き方が合っていれば部分点を与えるという基準に疑問を投げかけた。今回の共通テストでも連動する設問がいくつか存在するが,いずれも後者の設問の配点には「前者に正答した場合のみ」という基準が設けられており,連動する設問の採点基準として妥当なものになったと考える。