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2021年「大学入学共通テスト」への当社コメント(化学基礎・化学)

令和3年度(2021年実施)試験(化学基礎・化学)について

 

【総論】

 化学基礎・化学の両方とも問題の出題形式は共通テストのプレテストよりも従来のセンター試験と類似していたが,思考力や判断力を問う問題も出題された。

 化学基礎は大問数が2問,設問数が15問であり,昨年度のセンター試験(大問数2問,設問数13問)と同程度であった。また,化学は昨年度のセンター試験よりも,大問数が1題減少し5問,設問数が27問であり,昨年度のセンター試験(大問数5問,設問数28問)と同程度であった。いずれも,思考力や判断力を要する問題が増加したため,センター試験に比べて,時間的な余裕はなかったと思われる。

 共通テストから新たに加わった,思考力や判断力を問うことを目的とした問題は,グラフを用いて考察させるものや,教科書では触れられていない,受験生にとって見慣れない反応や設定を用いたものであった。与えられた問題文をよく読み,自身のもつ知識を活用することで解くことのできるものであった。いずれもよく考えられた問題であったが,従来と同様,対策が進んで問題がパターン化してしまうのではないかと懸念される。

 今回の大学入学共通テストは新傾向の問題も出題されたが,昨年度のセンター試験と比べても平均点に大きな変化はなく,バランスのよいテストだったのではないだろうか。次回以降も,出題の工夫を続けて,受験生の化学的な思考力や判断力を問うことができるテストとなることを期待したい。

 

 以下に,特徴的な設問をいくつか紹介する。

 

■解答形式に特徴のある問題

 「化学 第1問 問4a」や「化学基礎 第1問 問3b」は二桁の数値を一文字ずつ解答する形式の問題であった。いずれも計算結果を問う問題ではなくグラフを読み取った結果を答えさせる問題であった。計算結果を問う場合だと,途中計算における有効数字の取り扱いによって結果が異なることもあるからだろうか。いずれにせよ,受験生がグラフを正確に読み取ることができているかを評価できる良い形式であると感じた。

 

■方眼用紙を利用する問題

 グラフのデータを読み取る問題は近年のセンター試験でも出題されていたが,共通テストでは「化学第5問 問1」のようにデータと方眼用紙を与えて,受験生自身にグラフを描かせる問題が出題された。この問題はグラフを描かずとも解答が可能であった,もう少しグラフを生かして解答させる工夫が必要ではないだろうか。

 

■問題文をよく読み,与えられた情報をもとに考察する問題

 今回の共通テストで最も目立ったのは,教科書に記載されていない,受験生にとって見慣れない反応や設定をテーマにした問題であろう。

 

  化学基礎

        第2問 問1 陽イオン交換樹脂に関する問題

        第2問 問2 塩化カルシウムの吸湿性に関する問題

 

 化学

        第2問 問2 空気亜鉛電池に関する問題

        第3問 問3 光化学反応に関する問題

        第5問 問5 グルコースに関する問題

 

などが挙げられる。特に,光化学反応,塩化カルシウムの吸湿性に関する問題は,受験生には取り組みにくいものだったかもしれないが,化学的な思考力を問うことのできる良問であると感じた。

以上